ここからは、いわば各論です。静物、風景、人物について、私
がこれまでに得た内容、感じた点をご披露しましょう。
絵は、むやみやたらに、ただ描けば、どこかで何かが捕まえられるという考
え方もあるとは思いますが、私は、主役のどこに感動し、どう描けばよい
か、ということを納得してから描くという考え方が、より短時間で目的にた
どり着けると思っています。
静物とは、広辞苑によれば、静止して動かないもの、自ら動く力のないも
の、また静物画の対象となるものとあります。一般に静物画とは、人物画
や、風景画などに対し、花、果実、器物どを題材として描いた絵画と言われ
ています。
静物も、まずは構図の描き方です。私は、水彩画は、構図が60%、色調が
30%、物語などが10%だと考えています。
構図の基本は、まず主役(または感動して描こうと思ったもの、風景や、人
物なら見せ場とも言います。)を、例の黄金律の4か所のいずれかの場所
に、まず据えるのです。そして、主役が引き立つように脇役を両側に配置す
るのですが、この配置は、斜め上から見たとき主役と脇役が不等辺三角形に
なるように配置するのです。
お人形など頭のあるものは水平に置き、それ以外の静物のモチーフは制作者
が椅子に掛けた時、膝の高さのテーブルに並べるのですが、これは対象物の
全体が見えるように斜め上から見た状態を描くのです。
モチーフの配置方法
絵は、平らな紙に立体的に表現する(平面画法)のですから、遠近法を活用
し、小さな紙一杯に大きく表現するのが良いと思います。
画面一杯山型になるように描く
果物や、野菜ならなるべく籠の中に沢山入っているように真ん中が山型に、
しかも明るい色(白、黄色、オレンジ、赤)が手前にあり、奥には暗い、寒
色(ブルー系)のものを入れるようにします。
手前に明るいモチーフを配置する
頭のある人形などは目線と平行にモチーフを置き少し側面から奥行きが分か
るように描く。
静物の基本形は、球、円柱、箱の三種に分けられますが、とかく誤り易いの
は、人工物の箱型を描く場合です。
箱を見るとき、奥に向かってすぼまっていく形なのです。小さな箱は、これ
ほど極端には見えないとは思いますが、ビルなどを描くときは、この法則を
無視することは出来ません。
間違い易い箱型の描き方です。
また、バックを付けて描く。バックや影がないと標本図や、いわゆる植物画
になってしまいます。
* バックは、主役を引き立たせるために描くのですが、補色(二つの色を
適当な割合で混合する場合の、一方の色を他の色に対していう語で、一般的
には反対色をいう。)を使うか、主役や脇役に使った色を混ぜたものにする
かによって、前者は画面がポスターのように際立ったものになりますが、後
者は画面が穏やかになります。
バックを補色にしたもの
バックを主役か脇役の色を混入して仕上げたもの
物体の陰影(かげ、いんえい)には、陰と影の二つのかげがあるので、良く
注意して表現します。
影(シャドー)は、物体や人により光を遮る部分で、陰(シェード)は、光が当
たらないで隠れて見えない部分。全体的に暗い部分の日陰。