絵をなぜ描くのですか。と聞かれてもその答えは百人が百通りで、纏めるこ
と自体に無理があると思っています。
1940年9月12日、フランスのモンテイニヤック村の少年が 穴に落ち
た飼い犬を友達3人で救出したときに発見した今から2万年前の後期旧石器
時代のクロマニヨン人によって描かれたラスゴーの壁画から分かるように、
人は大昔から絵を描いていました。
私は、子供の頃から絵を描くのが好きでしたので、60年前から絵を観た
り、描いたりしていましたが、いくら描いても自分が思っているように表現
できませんでしたので、スケッチ画、油彩画、水彩画、日本画、中国画など
を12人の先生から教えを受けました。
しかし、どのような描き方をすれば満足できる絵が描けるのかが理解出来な
かったのです。それは、15人から20人位の生徒の中に混じって先生が順
番に回ってこられるのを待って実技指導を受けるのですが、受講時間が2時
間ですので、実質110分を20人で分けますと、一人5.5分です。これ
では十分な指導もいただけませんし、高名な大先生になればなるほど「まあ
いいでしょう」とか「構図も色も良い」などと言われてお仕舞となっては、
なぜどこが、どうして良いのか、は分かりません。
定年後単身で海外のホテルに仕事で長期滞在していた時、余暇を見て世界の
名画45枚を正確に模写しましたら、自分なりに絵画の描き方の法則が分か
ったのです。
私の絵画は、「水彩による具象絵画」です。
物や、景色や、人物を見て感動したものを描くのですが、描いた絵が何を描
いたのかが分かり、しかも、快く、いつまでも見飽きないものを目指してい
ます。
絵は、写真ではなく、また、イラストでもありません。観て感動したものを
心の中で整理し、自分なりに組み立てて、画材の性質を活かしながら紙や、
ボード、キャンバスなどに表現(平面画法)するのですが、私はこのような
絵を目指しています。
感動したものの中心となる主役はできる限り正確に、忠実に描写 します
が、その周りは主役が引き立つようなものを配置したり、バックにするので
す。つまり、良いとこ取りをして全体をまとめるのです。
もともと絵は、絵空事であり、フィクション(虚構)と考えています。